「ネズミ小僧捕り物帳」 「続・ネズミ小僧捕り物帳」 【五日目】 昨日閉じ込めた配電盤を開けた。 が、そこにネズミの死骸は無い。 見ると、木の壁の片隅が食い破られている。 「!」 奴が昨日必死にカリカリやってたのは、ここに穴を開けたのか!! 断末魔のもがきでは無かったのか。 あの短時間で逃げ道を作ったのか。 恐るべしネズミ。 ・・・不味いな、天井裏に逃げ込んだか。 【六日目】【7日目】 ネズミは現れず。 しかし天井裏には食べ物は無いはずだ。 奴は必ず降りてくる。 腹をすかして降りてくる。俺には確信のようなものがあった。 家の中は、ほのかにハッカのにおいがする。 食べ物は、でかタッパに入れて隔離してある。 【八日目】 朝。 でかタッパの脇にある、手で触れると自動的にスイッチが入る電気スタンドが、点いている。 誰も触っていない電気スタンドがなぜか点灯している。 ふっふっふっふ・・・・・。 はっはっはっは・・・・・。 見ると、タッパの上に置いてあった毒餌の袋が食い破られている。 うわっはっはっは・・・・。 覚悟しろネズミ! お前が食ったその御馳走は、毒がはいっているのじゃー。 美味かったかもしれないが、毒入りじゃー。 美味かったか、美味かったか、お前はもうすぐ死ぬのジャー。 それを知ったカミサンは、 「天井裏で死んだら、ウジが湧く」 【九日目】 朝。 電気スタンドが点灯している。 ふっふっふっふ・・・・・。 はっはっはっは・・・・・。 さらに餌が減っている。 はぁっはっはっは・・・・・。 たくさん喰え、たくさん喰え、御馳走じゃー。 【十日目】 朝。 今日もまた、電気スタンドが点灯している。 ふっふっふっふ、はっはっはっは・・・・。 【十日目・夕方】 店に行こうと、家を出る。 勝手口の外で、スローモーションのように動く小さな黒い動物。 よく見ると黒くない、ねずみ色だ。 お!ネズミ小僧!! 出たな、俺を待ち伏せか。 喧嘩なら買うぞ!!! 俺は身構えた。 しかしどうやら、喧嘩を売りに来たのではないようだ。 あの素早いネズミがゆっくり動いている。 人間の気配を感じても、その動きは変わらない。 あまりのその動きの悪さに、思わず俺は聞いた。 「おい、どうかしたのか?顔色悪いぞ」 するとネズミは、 「・・・・・なーんか、悪いもの食った見てぇで、どーも調子悪いんだ。・・・・・用なら後にしてくれ・・・・・ちょっと風通しのいいところにいって・・・休もうと思ってな・・・・・・」 ネズミは、道路まで出てへたり込んだ。 「おい、こんなところに居ると、猫に見つかるぞ」 「・・・・いーから、放っといてくれ。・・・まったく何がいけなかったのかなぁ・・・・あー調子悪ぃ。・・・・・ん、熱があるわけじゃ無いんだ・・・・・あー気持ち悪ぃ・・・」 「―――俺仕事に行くからな」 「あー」 「―――猫に気をつけろよ」 「あーー」 十日間における死闘は終わった。 この会話を最後にネズミは、我が家から居なくなった。 勝手なものだが、殺そうとしていたネズミも、いざ弱った姿を見ると哀れに見えてしまう。 多分奴は、死んだだろう。 うちに入り込んで来なければ、寿命をまっとうしたのだろうが、それも人生。いやネズミ生。 いや、奴は運良く生き延びて、再びネズミ小僧として活躍しているかもしれない。 さらば、ネズミ小僧。 もう、二度とうちに来たらイカンゾ。 完 |