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2004年04月29日(木)・「続続・ネズミ小僧捕り物帳」
「ネズミ小僧捕り物帳」
「続・ネズミ小僧捕り物帳」


 【五日目】
 昨日閉じ込めた配電盤を開けた。
 が、そこにネズミの死骸は無い。
 見ると、木の壁の片隅が食い破られている。
「!」
 奴が昨日必死にカリカリやってたのは、ここに穴を開けたのか!!
 断末魔のもがきでは無かったのか。
 あの短時間で逃げ道を作ったのか。

 恐るべしネズミ。

 ・・・不味いな、天井裏に逃げ込んだか。


 【六日目】【7日目】
 ネズミは現れず。
 しかし天井裏には食べ物は無いはずだ。
 奴は必ず降りてくる。
 腹をすかして降りてくる。俺には確信のようなものがあった。
 家の中は、ほのかにハッカのにおいがする。

 食べ物は、でかタッパに入れて隔離してある。


 【八日目】
 朝。
 でかタッパの脇にある、手で触れると自動的にスイッチが入る電気スタンドが、点いている。
 誰も触っていない電気スタンドがなぜか点灯している。


 ふっふっふっふ・・・・・。
 はっはっはっは・・・・・。
 見ると、タッパの上に置いてあった毒餌の袋が食い破られている。
 うわっはっはっは・・・・。
 覚悟しろネズミ!
 お前が食ったその御馳走は、毒がはいっているのじゃー。
 美味かったかもしれないが、毒入りじゃー。
 美味かったか、美味かったか、お前はもうすぐ死ぬのジャー。

 それを知ったカミサンは、
「天井裏で死んだら、ウジが湧く」


 【九日目】
 朝。
 電気スタンドが点灯している。

 ふっふっふっふ・・・・・。
 はっはっはっは・・・・・。
 さらに餌が減っている。
 はぁっはっはっは・・・・・。
 たくさん喰え、たくさん喰え、御馳走じゃー。


 【十日目】
 朝。
 今日もまた、電気スタンドが点灯している。

 ふっふっふっふ、はっはっはっは・・・・。


 【十日目・夕方】
 店に行こうと、家を出る。

 勝手口の外で、スローモーションのように動く小さな黒い動物。
 よく見ると黒くない、ねずみ色だ。

 お!ネズミ小僧!!
 出たな、俺を待ち伏せか。
 喧嘩なら買うぞ!!!
 俺は身構えた。

 しかしどうやら、喧嘩を売りに来たのではないようだ。
 あの素早いネズミがゆっくり動いている。
 人間の気配を感じても、その動きは変わらない。


 あまりのその動きの悪さに、思わず俺は聞いた。
「おい、どうかしたのか?顔色悪いぞ」
 するとネズミは、
「・・・・・なーんか、悪いもの食った見てぇで、どーも調子悪いんだ。・・・・・用なら後にしてくれ・・・・・ちょっと風通しのいいところにいって・・・休もうと思ってな・・・・・・」

 ネズミは、道路まで出てへたり込んだ。

「おい、こんなところに居ると、猫に見つかるぞ」
「・・・・いーから、放っといてくれ。・・・まったく何がいけなかったのかなぁ・・・・あー調子悪ぃ。・・・・・ん、熱があるわけじゃ無いんだ・・・・・あー気持ち悪ぃ・・・」
「―――俺仕事に行くからな」
「あー」
「―――猫に気をつけろよ」
「あーー」


 十日間における死闘は終わった。
 この会話を最後にネズミは、我が家から居なくなった。
 勝手なものだが、殺そうとしていたネズミも、いざ弱った姿を見ると哀れに見えてしまう。

 多分奴は、死んだだろう。
 うちに入り込んで来なければ、寿命をまっとうしたのだろうが、それも人生。いやネズミ生。


 いや、奴は運良く生き延びて、再びネズミ小僧として活躍しているかもしれない。

 さらば、ネズミ小僧。
 もう、二度とうちに来たらイカンゾ。




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