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2004年02月12日(木)・「続・ネズミ小僧捕り物帳」
「ネズミ小僧捕り物帳」


 隣の部屋に逃げたネズミは、どこへ行ったのだ。
 残念ながら見失ってしまった。

 箪笥の裏、ピアノの裏ほか、居そうなところへゴキジェット噴射、噴射、噴射。
 名付けて、
「ゴキジェット一本攻撃」

 ゴキジェットが無くなった。
 運の良いネズミだ。
 今日のところは、勘弁しといてやる。

 耳を澄ましてもネズミの気配はしない。
 もしかしたら、奴は俺のゴキジェット一本攻撃で窒息死しているかも知れんな。

 カミサンは
「家の中で死なれたらウジが湧く」
 とブツブツ言っている。

「あした死骸探して掃除しとけ」



 翌日。【2日目】
 前日と同じように、一日を終えカミサンと居間で一杯やっていると・・・・。

 どこかで、ガサ・・・・ゴソ・・・・・・・・・・・・・・ガサガサ・・・・。

「―――居るな、ネズミ」
「でも、ウジが湧かないで良かった」
 そんな事じゃぁ無いんだ!


 おのれ!奴は生きている。
 ゴキジェットは、ネズミに効かないのか。
 ゴキジェット一本攻撃は効かないのか。
 不死身のネズミ。

 よくよく見ればパンがかじられている。
 見れば菓子袋がかじられている。
 見れば石鹸がかじられている。

 カミサンに命令。
「あしたネズミホイホイとネズミジェットを買って来い」
「そんなのあるの?」
「ある」
「あたし聞いた事無いけど」
「俺も無い」


【三日目】
 ネズミホイホイ、ネズミスプレー、毒餌を用意。
 それとゴキジェット2本。

 ネズミホイホイを、ネズミが通りそうな所へ2箇所設置。
 ネズミスプレーを、ネズミが身を隠しそうな所へ噴射。
 毒餌をお菓子の近くとパンの近くに、2箇所設置。


 ネズミホイホイは、その名の通りゴキブリホイホイのネズミ版。
 でっかいゴキブリホイホイだ。正式名称は知らない。

 ネズミスプレーは、良い香りのするハッカスプレーだ。
 ネズミは、ハッカの匂いが嫌いならしい。
 でもこれではネズミが避けるだけで、殺せない。

 毒餌は、文字通り毒餌。
 赤い袋に入っている。

 ねずみ退治3点セットで完璧だ。

 ネズミ覚悟!


【四日目】
 朝。
 ネズミホイホイを見ると、ネズミが入った様な痕跡があったが、引返して逃げている。
 ネズミホイホイを、ものともしない力を奴は持っているようだ。
 ホイホイは効かないのか。

 スプレーも効果の程は分からない。

 パンとお菓子の横に置かれた毒餌は、手付かず。
 パンとお菓子だけが、かじられていた。
 中々やるな、ネズミ。


 昼頃。
 ネズミホイホイのところで
「うわぁー」
 下の子の声。
 なんだ!ネズミか!!

 ネズミホイホイにネズミが入ったか!!!
 よし、逃がすな!!!!

 駆けつけると4歳になる下の子が、ネズミホイホイに手を入れて手をべチャべチャにしていた。
「あーーーおまえ、何やってんだ!」
 下の子は嬉しそうに笑っていた。
 その後、ネズミはホイホイにかからなかったが、下の子は2度かかった。

 この日大きいタッパを二つ買い、パンとお菓子を隔離。



 夜仕事から帰って来て、居間で一人で一杯。

 テレビを見ているとピアノの裏で、ガサ・・・ゴソ・・・。

 ん?
 ネズミか?
 立ち上がりピアノのほうに近寄ると・・・。

 出た!
 飛び出した!!
 走った!!!
 黒い小動物。
 ネズミ!!!!

 ネズミは部屋を横切り、壁を登り、電気のブレーカー配電盤の中に入った。
 俺は見逃さない。
 俺はすかさずゴキジェットを握った。
 そうネズミスプレーではなく再びゴキジェット。
 いくらネズミがハッカの匂いが嫌いでも、毒性が無ければ仕留める事は出来ない。
 ネズミスプレーはネズミにとって嫌いなだけで、効果は無い。缶の裏にもその様な事が書いてある。

 ピーマンの嫌いな奴に、いくらピーマンを食わせても死にはしない。

 配電盤の中に向かって、無差別ゴキジェット一本攻撃。

 いくらゴキジェットがネズミに効かないとは言え、配電盤という密室の中でゴキジェット一本攻撃を受けたら、さすがのネズミも堪らんだろう。

 ネズミは配電盤の中で暴れている。
 苦しいのだろう。
 配電盤の出入り口は、ゴキジェットのノズルで塞がれている。

 カリカリカリカリ、ガサガサガサ、ゴソゴソゴソ・・・・・。

 往生しろネズミ!

 丸々一本噴射し終わって、穴を塞いだままの状態でゴキジェットをそこに置く。


 必死にもがくネズミ。
 やがて、カリカリ・・・ガサ・・ガサ・・・ゴソ・・・・・ゴソ・・・・・・・ゴ・・・・・・ソ・・・・・―――静寂。

「死んだか」

 勝利を実感した私は、焼酎をグッと飲んだ。
「悪く思うなよ、ネズミ。うちに入り込んだらこうなるんだ」


 念のため配電盤はそのまま毒ガス密室状態のままにして、寝ることにした。

 死骸の片付けは、明日カミサンにやらせよう。


つづく              


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