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2007年12月16日(日)・「チョイワルFIGHT」
 今日、アマチュア・キックボクシングの試合をした。
 結果は・・・・・。


 10月31日(水)に通っているキックボクシング・ジムの会長が、
「マスター、こんなのありますけど、どうですか」
と、なにやら印刷物を手に私に声を掛けてきた。 見ると、12月に開かれるアマチュアのキックボクシングの大会案内。
 私とは無関係と思ったのだがよく見ると一般とは別の部門で、40歳以上のクラスがある。40歳から5歳毎に区切られていて、何と60歳超クラスまである。
付いたタイトルが、”チョイワルFIGHT”。今はやりの”チョイワルおやじ”をもじって付けられたタイトルだ。
(なんだ、そりゃ!?)
と思うも、横で会長とトレーナーが声をそろえて、
「マスターにぴったりじゃないすか!」
「へ?」

 しかし私も嫌いじゃないので、ちょいとばかり興味をそそられる。もし私が出るとしたら45〜50歳のクラスで80kg以下のライトヘビー級だ。
 勿論アマチュアなので、TVで見る「キックボクシング」「ムエタイ」「K1」などと違いヘッドギア等の防具をつけての試合で、試合時間も短いはずだ。
「どうですか、マスター。宜しかったら」
 無意識に口をついて出た言葉が、
「いいすっねぇー」

 ジムに入って3ヶ月も経たないのに、頭の足りない私は前向きになっていた。

 そのことを夜自分のお店でお客さんに話したら、
「応援に行きマーース!」
「頑張ってください!!」
「あ、あの・・・・まだ・・出ると決めたわけじゃ・・・・・ないんだけど・・・・」
「応援に行きマーース!」
「頑張ってください!!」
「あーーーー・・・・・(言うんじゃなかった)」

 11月06日(火)は、一週間ぶり位のジム。なんやかんやでジムに行く時間が取れなかった。
 12月16日(日)の”チョイワルFIGHT”に出る旨、会長に申し出る。
「やりますかぁー」
「ええ。まだ身体もろくずっぽ動かないし試合なんて早いかなとも思うんですけど、やってみようかと思いまして」
「分かりました。頑張りましょう」
 試合は約1ヶ月後。

 入門以来私がやっていたリハビリ的放し飼い”おじさんノンビリ・トレーニング”は、試合向け放し飼い”おじさんノンビリ・トレーニング”に変わった。
 出るからには、勝利を目指すのじゃ。
 古傷を目覚めさせないよう気をつけながら、トレーニングのグレードを上げるのじゃ。

 12月7日(金)、トレーニングを終えジムのシャワー室から出ると会長が、
「今、事務局から電話がありまして、マスターの相手が怪我して出られなくなりまして、一般の部に最悪出て頂く事になるかもしれないと言ってきたんですけど、どうしましょうか」
「?」
「もし駄目な場合は、キャンセルでもかまわないと事務局は言ってきているんですが」
「―――人間そろわないんだ」
「みたいですね」
「構わないよ」
「!?」
「誰とでもやるよ。やることは一緒だから」
「わかりました」

 格好付けていった訳ではないのだが、何と言う事だ。活きの良い若いのとやるのか。こんな形で新たなる試練が待ち受けて居ようとは。

 翌12月8日(土)、ジムのシャワー室から出ると、トレーナーが、
「今、事務局から電話がありまして、マスターの相手が見つかったって連絡がありました」
 どうやら事務局の人間は、俺がシャワーを浴びているところを狙って電話をかけてきているようだ。
「あ、見つかりましたか。いくつの人ですか?」
「言ってませんでしたけど、多分一般の方で”チョイワルFIGHT”じゃないと思います」

 ルールは”チョイワルFIGHT”と同じだが、私は一般の部のCリーグの試合に回された。
 だが、それがどーした、
「誰でも掛って来んかい!」


【12月16日(日)・試合当日】
 試合のためにどれくらいトレーニングができたかというと、決してハードトレーニングを積めた訳ではない。しかし怪我、仕事、生活等の状況を考えるとやれる事はやってきた感はある。
 満足とは程遠いが、今の自分のできることはやったと思う。

 08:15
 家を出る。
 カミさんと息子2人応援に来る。

 08:45
 大森駅西口でジムの会長、トレーナー、同門佐々木選手、宇野選手と待ち合わせて9時会場入り、大森ゴールドジム。

 09:15
 計量は、問題なくクリア。78.2kg。
 計量後、カミさんの作ってきた塩おにぎりを食べる。
 怪我で走れなかった事と若干の減量で、正直言ってスタミナに一抹の不安有り。
 会場の片隅で身体をほぐす。
 会長にミットを持ってもらい、軽くミット打ち。パンチはまあまあの感触だが、蹴りが良くない感じ、下半身が重い。
 会場のジムに吊ってあるサンドバッグを蹴ってみるが、やはり蹴りがしっくりこない。ま、もともと蹴りが上手なわけでは無いのではあるが・・・。

 09:50
 開会式

 10:10
 第1試合開始。
 ジムの仲間、大学の友人らが応援に来てくれている。有り難い。
 第10試合Cリーグ・同門佐々木選手勝利。オメデトウ!

 そして遂に来た。
 10:40
 第14試合Cリーグ・私の試合。Cリーグの試合は、1分X2ラウンド。対戦相手は阿部選手(DEEPジム)。
 いまだ正体不明ながら、
(DEEPジムって、ひょっとして総合格闘技から何からプロが沢山いるところじゃないの!?エライところから来てんな。そんなところの若い衆が来てるのか・・・・・。しかし私は勝つ。掛って来んかい!!)

アナウンス「青コーナー・阿部選手、DEEPジム。赤コーナー・小野選手、Y’ZDジム」
      リングに上がると、レフリーが近寄ってきて、
レフリー 「マウスピースは?」
小 野  「(イー)」
レフリー 「ファールカップは?」
小 野  「(うんうん)」
      青コーナーに行って同じ事をするレフリー。
      試合開始。
     「カーーーーーン!」
      お互いコーナーから出てきてグローブを軽くあわせる。何故こうするのか私は意味を知らない。
      しかし皆やっているので、私もやる。
      中にはやらない選手もいるので、強制では無い様だ。

      相手のローキックを私がステップバックしてよける事から試合は始まる。
      相手がコーナーから向かって来てはじめて分かったが、阿部選手の身長は私より一回り小さい。
      しかし筋肉に覆われた身体は豆タンクといおうかウウェイトリフティングの選手のような感じ。
      それに引き換え、私はスライムを身にまとったようなタプタプの身体。
      その肉体的優位性を武器に突進してくる阿部選手。
      年はよく分からない。40過ぎといえばそうだろうし、30前といえばそうだろうし・・・。

      肉体的優位性を感じ取ったと思われる阿部選手は、一気に前に出てきた。
      しかし、ここで下がらず打ち合う。そうしないと相手は一気呵成に攻め込んでくる場合が多い。
      私のジャブが阿部選手の顔面をとらえる。阿部選手は、むやみな突込みをして来なくなった。
      しかし、サウスポーの構えから、ローキック、ワンツースリーフォーとコンビネーションを繰り出して来る。
      私はというと、単調にジャブジャブ、ワンツーワンツー、時々蹴り。
      両者有効打無く一進一退。しかし、アナウンスが、
アナウンス「青・・・・ポイント・・・・3ポイ・・・・・・・・・・赤・・・・ポイン・・・・・・青・・・・・」
      なにやら数えているようだ。その基準は分からないがポイントを数えている。
小 野  (そうだ!ルールはポイント制だった)
      そんなことはすっかり忘れてたが10ポイント先取制の試合だった!
      その時、
     「ガツッ」
      この試合両者通じて唯一と言って良いダメージ的有効打、俺の右ストレートが相手の顔面をとらえた。
      一瞬動きが止まりガクッと来た阿部選手。
     (いまだ!)
      ラッシュをかけるが、いや掛けたかったが・・・・・スタミナが無い。クソッ、力が出ない。散発のラッシュ。
      全然ラッシュじゃない。相手も反撃してくる。
     「カーーーンッ」
      1ラウンド終了。
      どうやらポイントでは、私が負けているらしい。
      セコンドについてくれている福富トレーナーが、
福 富  「相手バテテますから、一気にいきましょう」
小 野  (・・・俺もバテテンだけど)
      たかだか1分のラウンドなのに・・・・。

      第2ラウンド開始。
      この時ポイントは7対8で阿部選手リードだったらしい。
      阿部選手のコンビネーション、私の単発的攻撃と言う試合展開は、第1ラウンドとあまり変わらない。
      両者有効打無いまま終了のゴング、
     「カーーーンッ」
小 野  (あれ?もう終わったか。1分て言ったってチョッと早くねぇか?)
      ところがゴングの意味は私が思っていたものと違っていた。
アナウンス「青10ポイント先取です。試合終了です」
小 野  (???)
アナウンス「只今の試合、10ポイント先取で青コーナー阿部選手の勝ちです」
      レフリーが阿部選手の手を上げている。
小 野  「――――」
      お互いグローブを合わせ、会釈して自コーナーへ帰る。
      試合終了。
      リングを降りながらセコンドについてくれていた人たちに、私はしきりに謝っていた。
小 野  「すみませんでした、ホントに―――負けちゃってすみません」
福 富  「イエイエ、ナイスファイトでした。お疲れ様でした」
小 野  「すみませんでした」

 後で聞いたら、ポイント9対9になっていて、阿部選手が10ポイント目を取って終わったと言う事だったらしい。
 ポイントの基準は私にはよく分かっていないが、結果に文句はない。ルールに則った判定で、基準を知らない私がいけないのであるから。
 私は、緊張感はあれど全く緊張していないつもりだったが、アナウンスのポイント・コールは全く聞こえていなかった。セコンドからの声もどうやら半分くらいしか聞こえていなかったようだ。
 どこかにいらない緊張があったのだろう。反省。

 試合は、敗北に終わった。
 クソッ!

 その後、第35試合宇野選手のBリーグの試合(宇野選手勝利、オメデトウ)を応援して会場を離れる。

「Bリーグルールはダメージ制だから、Bリーグルールだったらマスターも判定勝ちだったと思うんですけどねぇ・・・」
と私を気遣ってくれる発言。その気遣いに感謝しつつも、
「いぇいぇ」
と曖昧に答える私。

 顔はニコニコしていてもどんな形であれ敗戦とは悔しいもので、私は自分の不甲斐なさ、つまり自分に対する怒りで一杯である。
「クソッ」
 ただ、敗戦の悔しさは多々あれど敗戦のショックは無い。
(次は、勝つぞ!)
(もっと練習だ!!)
と気持ちだけは若く燃える私がそこには居た。
 この気持ちを忘れてはいけない。
 この気持ちを持続させなくてはいけない。
 その時だけ思うのは、あまりに簡単で安易で・・・・とに角、前を見続けるのだ。

 しかし試合という、日常とは違う次元の緊張感に身をおいたため、当然の事ながらとても疲れた。


 家で、カミさんの回したビデオを見る。
 反省点、次への課題が沢山見える。
 やらなきゃいけない事、多過ぎ!

 しかし、しかぁし、身体が動く限りおじさんはまだまだ、まだまだ行きますよ!!


 ・・・・・と、まあこんな感じの小野明良のアマチュア・キックボクシング、デビュー戦で御座いました。

〜お粗末〜



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