小野明良が選ぶゴキブリ退治の3種の神器。 ゴキブリホイホイ、コンバット、ゴキジェットプロ。 ゴキジェットプロは効く。 し・・か・・し・・・・・・・・。 仕事を終え家に帰ると、流しに大型のチャバネ・ゴキブリ。 (こいつか・・・・・昨日の奴は・・・・・) 私はアース製薬社製「ゴキジェットプロ」を手に取った。 噴霧。 イチコロ。 ようやく終わった・・・・長い戦いだった・・・・・・・・最後はあっけなく・・・・。 思い起こせば昨日の仕事あと・・・・・・・。 仕事を終え家に帰ると、ガスコンロの上に大型のチャバネ・ゴキブリ。 (無駄な殺生ではあるが成仏しろよ) 私はアース製薬社製「ゴキジェットプロ」を手に取った。 噴霧。 チャバネは、逃げた。 私は、かなり酔っていた。目標に対する狙いが甘かったようだ。 チャバネは、ガスコンロの魚焼き用グリルの中へスルスルと逃げ込んでいった。私は目標を見失ってしまった。 我が家のガスコンロは二口タイプで真ん中に魚焼き用のグリルがある、ゴク一般的なヤツ。 (おのれ、逃がしてなるものか) グリルの蓋を開け、中へ無差別絨毯噴霧。 シューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。 蓋を閉める。 (これだけやっておけば、生きてはいられまい) しかし、ここで私はハタと気がつく。 (グリルの網とかを洗わないと、毒が家族の口に入ってしまうな・・・・・。洗おう) 一間置いて、中を洗おうと金網と受け皿を取り出す。取り出したグリルの中を覗くと、なんとグリルの中は隙間だらけ。 (なんだよ、これじゃ逃げちゃったかもしれないな) (・・・イヤイヤ待てよ・・・まだコンロの中のどこかに潜んでいるに違い無い) 噴霧。沢山。ゴキジェットプロ。 シューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。 ここで私の酔った頭の中に、名案が浮かぶ。 (よし!グリル加熱でチャバネをあぶり出しだ!!) グリルを覗きながらつまみをひねる、カチャカチャ。 ? 私は、グリルではなくコンロのつまみをひねっていた。これでは火がつくわけが無い。 我が家のコンロはとても古く火の付きが悪いため、2、3度カチャカチャとやり、その時つまみを間違えた事に気がつく。 私は、コンロのつまみからグリルのつまみに持ち替えた。 見たところ、チャバネは物陰に身を潜めているらしくどこにいるか分からない。中々賢いやつだ。しかし相手が悪かったようだな。何しろ相手は俺だぜ。 (覚悟、チャバネ) カチャ! ボンッ!!! 私の目の前がオレンジ色になった。 (ウワッ) 目をつぶるが、オレンジ色が私の感覚を支配している。 平衡感覚を失う。 瞬時に沢山の事が、頭を駆け巡る。 (クソッ、ヤラレタ) (一体何だ) (そうか、ゴキジェットか) (あのガスか) (バッキャロ、間抜け小野) (バッキャロ、アース製薬。ねじ込むぞオラァ) ハッと我に返る。 私の右手にはゴキジェットプロが握られたままだった。 つまみをひねった左手は、まだつまみを握っていた。どうやら我を失ったのはほんの一瞬のようだ。 たんぱく質の焼ける臭いがする。腕の毛、眉毛、まつげ、頭髪が焼けて焦げた。 (嗚呼、、、、ドリフのコントをやってしまった・・・・・・) (しかし俳優、演技者としては、これはプラスの経験だな) (爆弾に吹っ飛ばされるというのは、この何十倍も何百倍も強烈なんだろう) 流しで顔を洗う。いや、洗うというよりは冷やす。 火傷の手当ての第一は、冷やす事。 足音が近づく、 「どうしたの」 顔を洗い冷やしているとカミさんが、今の音を聞きつけて2階から降りてきた。俺は体勢を崩さず、 「爆弾で、吹っ飛ばされた」 「え!?」 「ゴキジェットをグリルに沢山噴射したあと火をつけたら、爆発した」 「駄目よ!あれは火気に注意って書いてあるんだから」 「今更遅い・・・・」 「なにやってんのぉ、まったく、子供じゃないんだから・・・・・」 「書いてあるのか?」 「あるわよ、ほら」 カミさんが、流しにおいてあるゴキジェットを再び俺に渡す。何やら能書きが書いてある。 「ホントだ。・・・・・・・クソ・・・これじゃアース製薬にはねじ込めないな・・・・・」 「何言ってんのよ、冗談言ってる場合じゃないわよ」 「全く何やってんだか、チクショー」 俺は自分に言った。 目の周りがヒリヒリする。 「おい、タオルに氷をくるんでくれ」 アイスノンの様な保冷材をぬれタオルでくるんで顔に当てる。いわゆるアイシング。 オロナイン軟膏を顔に塗る。さらにアイシングを続ける。 「おい、コップに氷」 顔を冷やしながら酒を飲む。 「おい、俺どんな顔してる?」 「別に見た目は普通だけど」 「眉毛とか無くなってないか?」 「ん?あーー、よく見れば焦げてる。まつげとモミアゲのところも。でも見た目はよく分からないくらいよ」 「火傷はしてないか?」 「見た目は、なんとも無いけど」 「そうか」 「痛いの?」 「ちょっとひりひりする。でも冷やしてオロナイン塗っておけば明日は大丈夫だろ」 顔を冷やしながらカミさんに聞く、 「爆発音聞こえたのか?」 「聞こえたわよ」 「どれくらいだ?」 「うーーん、そうねぇ、何か面白くないことがあって酔って帰ってきたお父さんが、トースターかなんかを思いっきり床に叩き付けた位かな」 「ふぅーん(何だよその例え)、そんなデカイ音だったんだ・・・」 カミさんは2階に引き上げ、俺はさらに1時間ほど朝5時くらいまで顔面アイシングを行う。 今朝起きてから鏡を見る。 パッと見、異常なし。 よく見、眉毛焦げ、まつげ焦げ、モミアゲ焦げ。 目の周りの火傷は、まだ若干ヒリヒリするが問題なし。 眼球も多少火にさらされた様だ。若干の違和感がある。真夏の日焼け後というか、雪焼けの後の雪目という感覚に近い。目がゴロゴロするような感じ。 先がカールしたまつ毛同士が絡み合い、瞬きをするとマジックテープでくっつけたように瞼がくっつく。 それを瞼ヂカラで引き離す。 まるで大リーグボール養成ギブスならぬ、瞼ヂカラ養成まつ毛。(意味不明の人は”巨人の星”という古い漫画をお読みくださいませ) でも、ま、重大事にならず一先ずめでたしめでたし。 しかし・・・・・・・。 俺がこうなったのは・・・・・・顔がヒリヒリするのは・・・・・・瞼が瞬きのたびにくっつきそれを瞼ヂカラで引き離さなきゃいけないのは・・・・・ドリフのコントを演じたのは・・・・・・・奴のせいだ・・・・・・チャバネ・ゴキブリ。 自分の愚かさを飛び越えて、俺の逆恨みはチャバネ・ゴキブリへと向けられた。 奴さえいなければ、こんなことにはならなかった。 奴は、未だぬくぬくと家の中で生きているだろう。 奴は、きっとあの爆風にも耐えて生きているだろう。 許・さ・ん。 今日仕事を終え帰宅。 すっかり昨日の大爆発など忘れていたところに、昨日の現場のすぐ近くに、流しの所に大型チャバネ・ゴキブリ発見。 まるで、俺の帰宅を待っていたかのように大型チャバネ・ゴキブリが流しにたたずむ。 (こいつか・・・・・昨日の奴は・・・・・) 昨日の記憶が蘇る。 ゴキジェット大量噴霧、グリル点火、目の前オレンジ、ドリフのコント、アイシング、トースターぶん投げ、子供じゃないんだから・・・・・・・・・・。 ウォーーーーーーーーーッ! (おのれ、現れたな!!) (神妙にお縄を頂戴しろ!!!) おっとり刀でゴキジェットプロを構える俺。 (今日こそは、逃がさんからな!覚悟!!) だが、ゴキは動じない。落ち着いている。 俺の殺気に気付いていないのだろうか?逃げない。 それとも奴は昨日犯した罪の大きさに、自首してきたのだろうか。 神妙にお縄を頂戴するつもりなのだろうか? 銃殺の刑、ゴキジェットプロ噴霧殺の刑を受けに来たのだろうか。 切腹の解釈を俺に頼みに来たのだろうか。 昨日の戦いで、相当のダメージを負っているのだろうか。逃げられないのか? 昨日のゴキジェット噴霧と爆発をかいくぐってきたその経験が自信となり、大きく構えているのだろうか。 敵として戦ってきた者同士にしか分からない相手に対する敬意のようなものが、私の中に生まれ・・・・・・・る分けない。 私は、ゴキジェットプロのロングノズルを奴に向ける。 殺気と気配を消し、静かに接近。間合いを詰める。 呼吸も、瞬きも許されない緊張感。 ゴキジェットの引き金に掛った右手の人差し指に・・・・・・・ギュッ!と力を入れる。 その瞬間、奴は気付き逃げようとするが、時既に遅し。 シューーッ! ゴキジェット噴射!! 噴射のガス圧で、奴は30センチ吹き飛ばされた。 逃がしてなるものか、追う私・・・・・。 逃げたといおうかゴキの吹き飛ばされた方向は、何とガスコンロ方向。 (おのれ、またしてもグリルへ逃げ込んで俺にドリフのコントをやらせるつもりか) (ナメルナ!) だが、二の矢は必要なかった。 ゴキジェットプロの攻撃を正面から受けた大型チャバネ・ゴキブリは、あっという間に死んだ。 イチコロ。 ようやく終わった・・・・長い戦いだった・・・・・・・・最後はあっけなく・・・・。 ゴキジェットプロは効く。 し・・か・・し・・・・・・・・・・説明書きをよく読んでから使用しましょう。 さもないと・・・・・ゴキジェット大量噴霧、グリル点火、目の前オレンジ、ドリフのコント、アイシング、トースターぶん投げ、子供じゃないんだから・・・・・・・・・・。 小野明良が選ぶゴキブリ退治の3種の神器。 ゴキブリホイホイ、コンバット、ゴキジェットプロ。 |