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2006年12月07日(木)・「安中華」
 今日は、単独行動。

 以前、お客さんから聞いた旨いとんかつ屋S、美味かった。
 以前、お客さんと話していて出てきた美味い餃子の店G、同意見。
 そういえば、蒲田のあそこが美味いと誰かが言っていた。
 そういえば、武蔵新田のあそこに入ってみたかったンだ。
 鶴見、洗足、・・・・・・。

 田端の床屋。その後知り合いの店に顔を出そうと予定を頭の中で組み立てる。

 そんなことを考えていると友人Tからtelが入り、頭の中で組み立てた本日の予定は、大幅変更。原宿H待ち合わせ。

 田端の床屋から後楽園の脇を通り、水道橋まで歩く。
 東京ドームを見て、先日のBilly Joelのコンサートを思い出す。

 原宿Hで掛けるレコードのチリチリ音。
 ブツ・・・ブツ・・・・ブツ・・・・ブツと、同じフレーズを繰り返すのが、妙に懐かしく味がある。

「なんか喰おう」
「餃子・ビール攻撃はどうだ」
「おう」
「紹興酒が飲みてぇな」

 行ったところは、渋谷の安中華。屋号知らん。
 サラリーマンだらけ、満杯。かろうじて最後の空席に滑り込む。6人掛けのテーブルに2人のサラリーマンが向かい合って座っているその横に、向かい合って座る形で相席。
 サラリーマンの背広姿で埋め尽くされた店内は、私にとって異様な世界に感じる。

 店長らしき人物と給仕のオネーちゃんは、中華なのにインド、パキスタン、ネパール、セイロン系の顔立ち。それ以外に香港?韓国?系のおじさんと日本系のおじいさん。店長は、料理を作りながら、フロアもこなす。香港?韓国?系のおじさんも、厨房、ホール、会計を行ったり来たり。日本系爺さんも同様。唯一インド、パキスタン、ネパール、セイロン系のオネーちゃんだけが給仕に徹していた。

 何か、多国籍無国籍なんちゃって中華の怪しいお店。
 こういうお店、私好きです。
 何故か先日入った、「見世物小屋」を思い出す。

 味?
 野暮は言うなよ・・・。
 ・・・・美味しいに決まってるじゃないか。

 あったかい紹興酒1本
(鍋に一度あけて、あっためてたよね、味煮詰まってない?)

 実は、相席で先に隣に座っていたサラリーマンの内の片割れは、いけ好かない奴だった。何故なら、奴は自分達の空いた皿を、俺達の方に押し付けるかのごとく置く。相席領土は机の半分づつという暗黙の協定を無視して国境侵犯した位置に喰い終わった皿を置く。

「おい、そこに置くなよ」
この言葉を、私は飲み込んだ。エライ!私は何と偉いのだ。イヤ飲み込まない方が偉いのかもしれないが・・・。

 マーボー豆腐
(これ何?麻棒豆腐?ふーん、わかったわかった)

 隣の奴は、変な奴だった。見た目はこれといった特徴の無い30代前半くらいの細身で背の高い男。バカなネーちゃんやOLからは、俺より確実にもてると思われる。しかし給仕のインド、パキスタン、ネパール、セイロン系ネーちゃんは、俺に秘密の笑顔を見せる。だからインド、パキスタン、ネパール、セイロン系おネーちゃんは、バカではない。

 豚肉となすの味噌炒め
(うんうん、テンメンジャンの味するよね)

 このバカネーちゃんコマシ系男は、店の片隅に置いてあるポケットティッシュを、大量に自分の机のところに持ってきた。その数15個ほど。どっかの金融会社の広告の入ったポケットティッシュ。
(へへへ、どんなモンだい。俺はこんな大胆なことが出来るんだぜ)
とその顔には書いてあった。
 このバカきっと以前同じことをやって、
(バカネーちゃんコマシ系男君て、凄ぉ〜〜い。カッコイイ〜〜)
なんて、目をウルウルキラキラ輝かせたバカネーちゃんが居た経験があるんだろうな。

 そういう変な汚物は視界から遮断して、歓談。ワシらは大人だから。

 餃子
(うんうんうんうん餃子ね餃子)

 Tが、
「最近のK−1て詰まらねぇんだよな、そう思わないか?」
「なんでだよ」
「なんか、こう、強そうに見えねぇんだよ」
「まあな。でも最近は俺トレーニングして無いからリングに上がって何とかなるとは思はなくなってきた」
「・・・そうか?まだまだいけるだろう」
「1分位なら俺の方が強い。だけどそれ以上は持たないと思う。だから街場でならまだ何とかいけると思うけど、試合じゃ無理だな」
「そうかぁ、そんなことないだろぅ」
Tと俺はこんな話で盛り上がる。ちなみにTもかなりの実績を持つ男である。

 ザーサイ
(ザーサイだよ、ザーサイ)

 ところが、こんな会話に思わぬ効果が。
 隣のバカネーちゃんコマシ系男が、相手にされていないにもかかわらず、必死に放出していた、
(俺をなめたらイカンぜよ。ティッシュ持ってきちゃうぞ)
の気が、ぴたっと止まった。
実はTは、それを狙っていた節がある。サラリーマンのTは、サラリーマンの習性を良く知っていて、サラリーマンでもバカネーちゃんコマシ系男のようなタイプは、隣の会話に聞き耳を立てるタイプだと知っていたようである。そこでちょっとくすぐりを入れたようだ。
(バッキャロ、根性ある奴だったら、突っかかってきちゃうじゃねぇか)

 あったかい紹興酒1本
(煮詰めすぎだと思うんだけど)

 その後2度と国境侵犯は起きなかった。
 それどころかバカネーちゃんコマシ系男は存在している気配を消した。
 気配を消す事が出来るなんて、実は奴はほんとに凄い奴なのかもしれない。

 給仕のインド、パキスタン、ネパール、セイロン系おネーちゃんが、
「ラストォオーダーデス」
「お愛想して」
「ハイ」
 秘密の笑顔。

 お金を渡したときと、お釣りを持ってきたとき、そして帰るとき、給仕のインド、パキスタン、ネパール、セイロン系おネーちゃんの秘密の笑顔3連発。全然秘密じゃない。

 多国籍無国籍なんちゃって中華良かったね。
 安中華、満足満足。


 渋谷でTと別れる。

 また、よしゃあ良いのに自由が丘で降りてしまった。
「D」
「A」



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