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2006年08月31日(木)・「熊ちゃんが逝った」
 私がかつて在籍した立教大学体育会拳法部では、先輩を「OO先輩」「XX先輩」と先輩付けで呼ぶ習慣があった。

 しかし、一級後輩の俺達は、同期だけで諸先輩の居ない所では「熊ちゃん」と呼ぶ事が良くあった。
「熊ちゃんがよー」
「熊ちゃんがナー」

 熊倉彰弘。享年多分50歳。
 昨日、国分寺市の東福寺で告別式。
 二浪の一級上の先輩だから、俺より三つ上のはずだ。



「熊倉さんがよー・・・・・」
 いつも気丈な同期の菅沼が、見舞った先から暗い声でワイルドバンチに電話を掛けてきた。
 そして店に来た。
「―――医者の話じゃ、一週間位。・・・・もって一ヶ月らしいんだ・・・・・」
「―――元気な時とは、・・・もう顔が違うんだ・・・・・」
「―――意識がないんだ・・・・・」
「―――白血病なんだ・・・・・」
菅沼は卒業後も、熊ちゃんと同じ会社に就職したため、もう30年近い付き合いだ。
俺は、卒業後、熊ちゃんに殆ど会っていない。

 翌日見舞いに行った。
 菅沼の言う通りだった。
 俺は声を掛けた。
 反応は、殆どない。
 だが意識レベルでは、俺を認識していると俺は感じ取った。
「エネルギーが、力が残っている限り、頑張ってくださいね」
「わざわざ来てくれたんだ、わりぃなぁ」」
明るい声が返ってきた。聞こえない会話。

 十日程して亡くなった。



 熊ちゃんのよく行く店で、熊ちゃんが居なくても熊ちゃんのキープボトルを飲んだ。

 池袋で飲んじゃぁ、要町の熊ちゃんのアパートへ転がり込んだ。
 ドンドンドンドン。
「せんぱぁ〜〜い、せんぱぁ〜〜〜〜い!」

 不在の時でも、戸を外してもぐりこんだ。
 鍵を開けて自分のアパートに帰ってきた熊ちゃんは、
「うわぁ〜〜!!お前らどうやって入ったんだ〜〜〜〜????」

 勉強なんて殆どしない俺とは違い理学部の熊ちゃんは、夜中勉強していた。
 寝ている俺達を起こさないように、小さいスタンド光で勉強していた。

 酒好きの熊ちゃんは、後輩によく酒を飲ませてくれた。
 しらふの後輩には厳しかったが、酔っ払った後輩には、とても寛大だった。

 熊ちゃんは・・・・・
 熊ちゃんは・・・・・
 心優しき熊ちゃんは・・・・・
 今遊びに行っても、快くアパートの扉を開けてくれるだろう。



 ドンドンドンドン。
「せんぱぁ〜い!せんぱぁ〜〜〜い!!」


 熊ちゃんに合掌。 


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