《沼部と言う駅名を知っているのは都民の2%》と言うアンケート結果が出た。と言うのは今考えた嘘。 昨日、私の店「ワイルドバンチ」の上の階にスナックがオープンした。 タイ人ママが始めたようだ。 東京都というくくりでは考えられない程寂れた町沼部に、灯が増えるのは良い事だ。 月末には、斜め向かいに焼肉屋さんもオープンする予定だ。 昨日の午後10時半頃の事。 私の店「ワイルドバンチ」の正面入り口前(出入り口は此処しかない)に、赤色灯を回す一台の車が止まった。 音を殺して、忍び寄るように停車したパトカー。 (なんだなんだ?) 店内に客は無し。 パトカーの扉が開くと、ドカドカと3人の警官がこちらを目指してくる。 (なんだよ) (おい、まさか俺に用じゃねぇだろうな) (俺は善良な国民都民区民町民かつ優良納税者だぞ。其処んとこ分かってんだろうな) (何か聞きたい事があるなら、口の聞き方間違えるなよ) (逮捕しに来たんだったら、何かの間違いだぞ) (逮捕状か捜査令状は、持ってるだろうな。じゃなきゃ店には入れてやんねぇからな) (それでも、突っ込んでくるなら俺はお前等を実力行使で阻止するからな) (覚悟はいいんだろうな) (俺は、警察にむやみに絶対服従するタイプじゃないからな) (最初に踏み込んでくる奴は、死ぬ覚悟で突っ込んで来いよ、おらぁ) (防弾チョッキは、着てるんだろうな) (刀剣阻止の鎖帷子は着てるか、あぁ) 俺は心の中でグーを握った。 誰がいつ扉を開けるか。 息を殺して待つその瞬間。 唾を飲む事も、瞬きをする事も許されない緊張の時間帯。 ―――――。 ドカドカ警官3人組は、ワイルドバンチ前を素通りした。 (――――) (???) (あらら??) (どこ行くの?) (うちじゃ・・・俺じゃないのね) 俺は心の中で握ったグーを解いた。 ドカドカ警官3人組一行は、ワイルドバンチ入り口の横にある階段をドカドカと駆け上がって行った。 パトカーはエンジンを掛けたまま、ハザードランプを点けて、其処に放置。 どうやら、2階の今日オープンしたスナックに行ったようだ。 (何だろう?) (――――) (!!*&#%$>+‘!!!) (麻薬密売組織か!!?) (違法賭博開帳か!!!?) (管理売春組織か!!!!?) (でもそういうところに踏み込むには手薄だよな・・・・) 5分後。 クラクションを鳴らす1台の車。 パトカーが邪魔で道を通り抜ける事が出来無い。 ドカドカ警官一人が、静かに階下に下りてきてパトカーを移動して再び店へ。 さらに5分経過。 ドカドカ警官3人組、静かに全員降りてくる。 俺は警官の一人を捕まえて、不審尋問を行った。 俺は警察官では無いので職務質問ではない。 不審な警察官を尋問。 「何があったんですか」 「あ、え〜〜、あのーーですね」 何故か口ごもる警察官。 (!) (お前等怪しいぞ) (お前等本物の警官か!?) (!!!!) (お前等上のスナック叩き―強盗―に来た、ニセ警官だろ!) (オープン初日の今の時間で、売り上げがあるわけねぇ〜〜だろ、バカ) 「カラオケの音の事で、ちょっと苦情が入りまして」 「・・・フーん。ア、そう」 俺は、不審尋問を打ち切った。 今日のところは信用しといてやるか。 平和な町沼部では、スナックのカラオケの苦情に対して警察署から大量3人の警官が派遣される。 |