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2005年10月08日(土)・「段々眉毛」
居酒屋で、向うの席にいる3人組。
俺が入る3分程前に入ったと思われる、男2人女一人の3人組。
テーブルの上にはまだ飲み物も出ていない。
何軒目なのか、かなり酔っている。
声がでかい。
特に女の声がでかい。

年の頃なら皆30と少し位か。
聞かずとも聞こえるその会話内容から、3人とも医者のようだ。
普通職業が分かりそうな会話は小声でする人が多いが、酔っている。

女 「ねえ、りっしょう大学ってしってるぅー?」
男1「??・・・あーーー、聞いた事あるような気がするけど」
女 「アーー、やっぱりあるんだー。あたしそんな名前の大学知らなくってさぁー」
男1「うん、確かあったよ。そんな名前の大学」
女 「へぇー、病院のOOがそこの出身らしくてさー、そこって頭いいのぉ???」

 自分の勤務する病院の職員の事らしい。

男1「いや、そんなでも無いと思うよぉー」

 立正大学関係者が聞いたら、あまりいい気持ちにはならないであろう会話。
 立正大学とは無関係の俺が聞いても不愉快な会話だ。
 3人とも同じ大学の出身者のようだ。
 バカ女の口は止まらない。

女 「やっぱりそうよねぇー、あいつ頭よさそうに見えないもん」

 そういう話をしたけりゃ学閥的に他校者がいない、クラス会とか同窓会とか、そういうところでやれよ。そんな話をする奴はたとえ勉強が出来たとしても、人間的にはかなりレベルが低いゾ。
 聞かなきゃいいのに、声がでかいから聞こえちゃう。
 さすがにもう一人の男が口を挟む。

男2「いや、俺知ってるよ。五反田っていうか、池上線の大崎広小路にある大学だよ」
2人「へぇー」
男2「伝統ある大学で古いんだよ」
女 「えぇーー?そうなんだぁーー」
男2「仏教系の大学で、学生数はそんなに多くないけど、古くて良い学校なんだよ、あそこは」

 男2の存在がなければ、店中から石つぶてが飛んで来るだろう。
 ひん曲がったエリート意識というのは、誰からも軽蔑される、嫌われる。
 他者の会話に口を挟むのは無粋なのは分かっているが、狭い空間での会話は、ある程度の気配りも要求されるものだ。



 ところで、私は、その女性の顔が気になってしょうがない。
 確かに一般的には知的な美人だといわれるかもしれない、その顔。
 しかしその顔は、会話の魅力の無さ同様、人をひきつけるものでは無い。

 しかし、私は見てしまう。
 どしてもついつい見てしまう。
 もっともっとよく見たい。
 オイ、もっとこっちへ顔を向けてくれ。
(ウフフッ、私に気があるのかしら。私って結構もてるのよね)
 そう思ってくれてもかまわない。
 兎に角もっとよく見せてくれ、その顔を。


 かなりの努力をして、見るともなくその女性を観察した結果。
 私は確認した。

 その女は、・・・・・・左右の眉毛の位置が・・・・・高さにして・・・・・1cm 程・・・・・・・・違う。
 表情のせいで、高さが違って見えているのでは無いという事を、私は見るともなく見る必死の努力で確認した。
 素の表情の時、女の眉毛は左右で1cm の段差がある。
 私は、これを確認するのに30分以上を費やした。

 ジャジャーン、世紀の大発見!!
 段々眉毛の真実!!!

 私の目の前に座っているカミさんは、私が斜め向うに座っている女性をチラチラ見るのであまり機嫌がよくなかった。
 しかし今回に限って言えば、私はその女性の魅力に参ったのではなく、その眉毛に参ったのである。

 何でそんな眉毛をかくんだ?
 必死になって化粧をした結果か?
 必死なあまりしかめっ面になって化粧をしたら、化粧をしたときは平行に見えた眉毛も、素の表情に戻した時には段差が出来てしまったのか?
 それとも受けを狙っているのか?
 それは、注目を集めるための作戦か?
 お前はそんなに目立ちたがり屋なのか?
 それともただ単に化粧が下手なだけか?
 お前は、失敗した福笑いか!?
 生まれつきの眉毛が、段々に生えているんだったら、ごめんなさい。


 話からすると、3人はそれぞれ違う病院に勤務するKO大学医学部の同窓生らしい。
 KO大学医学部といえば、残念ながらエリートと納得せざる終えない。
 しかし、人格を伴わない学歴ほど厄介なものは無い。
 ゆがんだエリート意識は、はっきり言ってこの世の汚物である。

 確かに巷には、学歴を鼻に掛けた嫌な奴がいる。
 別に、たいした事しているわけでも無いのに、高卒をバカにする大卒。
 さらに中卒をバカにする高卒。
 別に自分が作った会社でも無いくせに、自分達は一段上に立ったようなつもりになっている大企業のサラリーマン。
 一般人を小ばかにしたような役人。他にも数え上げたら切りが無い。

 その逆にこんな人もいる。
 自分の無学歴を必要以上にコンプレックスに感じて卑屈になってしまう人。
 コンプレックスが強すぎて、ちょっといい学校でたかっらって人のこと舐めるなよ、と何を言われた訳でも無いのに異常に反発する人。

 人は、差別感を拠り所にに生きているものではあり、それは否定でき無い。
 私は、誰々より、いい物を持っている、いいものを喰っている、いい頭を持っている、いい生活をしている、いい旦那を持っている、いい嫁を持っている、いい子供を持っている、力が強い、金は無いけど心が綺麗・・・・・etc。
 比較できないものまで、必死に自分の価値観の中に押し込めて、自分に都合よいように計ろうとする。
 社会的に口に出す事ははばかられても、腹の中では多かれ少なかれそんな部分を、人は持つ。
 人とはそういうものである。
 もし、私はそんなこと無いと言い切る人がいたら、私はその人に言おう。
「己を知らない、愚か者め!」
 それともただ単に、「嘘つき!」と言った方がいいだろうか。

 確かに平衡感覚を身に付けるのは、難しい事ではあると思う。私なんか、差別感の塊りである。
「ジィさんより俺の方が若いのじゃー」
「ガキより俺の方がエライのだー」
「同じ盛りそばでも、お前のより俺の方がちょっと盛がいいもんねぇー」
「お前の飲む高級酒は、どうせ会社の金だろー」
「良い服着ててもお前は中身が、カーラッポー」
「うちの子は世界一良い子じゃ、文句があっかー」
 etc。
 挙げろというなら、まだまだいくらでもある。
 差別感というより、ただのヒガミやネタミ、もしくはそれの裏返しだな。
 ま、根拠はどうあれ、人は優越感というものを感じたいのだな。
 だが平衡感覚を身に付けたいとも、私は常々思っている。


 ま、そんなことはさておいて、ゆがんだエリート女に一言。
「エリートだか何だかしらねぇけど、女医だからってどんなに偉そうにしようが、どんなにご高説を広げようが、そんな眉毛じゃ説得力ねぇぞ!」

 だって、その顔ですごい真面目な話されたって、段々眉毛を見たとたん笑っちゃうもんねーーーーー。

 それにもし生意気言ったら、泣かしちゃうからな。
 俺は女医の眉毛を指さして言うのだ、
「だーんだーんまーゆげー、だんだんまーゆげー、段々眉毛ー、だーんだーんまぁゆげぇー・・・・・・・・・・・」
 必殺の段々眉毛連呼攻撃。
 女医の顔がゆがみ、こらえきれずに女医は泣き出す、
「う、う、うっ、うっ、、、、、、、うぇーん、えーーん、えーーーーーん、えーーーーーーーーん」
 人が、
「どうしたの?」
 と駆け寄ってきても女医は理由も言わすに、
「えーん、えーん」
 と、ただ泣きじゃくる。沢山人が集まってきて
「理由を言わなきゃ分からないでしょ。どうしたの?」
 女医は泣きながら俺を指さして、
「・・・・あいつが、あいつが、あたしの事・・・・・・」
「どうしたの?・・・・・どうしたの??・・・・言わなきゃ分からないでしょ」
「・・・・・だんだんまゆげって言って、いじめるーーーーーーわぁーーーーーーん」
 その場にいる皆は心中「何だそんなことかよ」とか「事実だよな」なんて思いつつも、被害者保護の妙な正義感に駆られて、「ひっどぉーい」と射るような目で俺を睨み付けようとする。
 だがしかしそのときには、俺はもうその場から逃げ去っていないのだ。
 ハッハッハッハ。
 そして、叫びながら俺は逃げる。
「だーんだーんまぁーゆげぇ〜〜〜〜〜」
 ワッハッハッハ〜〜〜〜。
 ・・・・・・・・。
 どうだ。


 今日気になった事。
 ゆがんだエリート意識と段々眉毛。

 段々眉毛。
 今、巷の女医さんたちの間では、段々眉毛化粧が流行ってるのだろうか??????










 ところで、今日これを書いた私にも、段々眉毛に対する差別感が自分の中にあるという事を、私は発見した。

 段々眉毛星に行ったらきっと私は、変な眉毛!と言われて、笑われるに違いない。



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