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2005年05月15日(日)・「フラメンコ」
 君はフラメンコを知っているか?

 私が知ってるフラメンコ、
「カルメン」
 え?カルメンてフラメンコじゃないの??
 それともフラメンコでいいの??

 ま、いいじゃないか。そんなのどーだって。

 兎に角、俺は今日始めてフラメンコを観てきた。
 フラメンコのダンス公演を観て来た。

 良久常連のお客さんにフラメンコをやっているKご夫婦がいる。
 奥さんインストラクター、ご主人生徒。
 いつの頃からか少しずつ話すようになり、公演のチラシを店に置いたりもしている。
 いつも来ていただくばかりなので、今度は私が行く。
 勿論興味が無かったら私は行かない。
 お義理で嫌なものに付き合うような事は、私の行動定義には無い。

 ただ、踊りに限らず舞台と言うのは全般的に料金設定が高めなので中々腰が上がらない。
 一部を除けば、製作内情はみなカツカツでやっていて大変で、決してボッタクリ値段ではないのは分かるのだが、やはり割高感は否めない。
 知り合いが関係しているときなどは、なるべく行きたいとも思っているのだが。

 さて、インストラクターのK奥さんが出演します。
 生徒のKご主人はと言えば、私が観劇中私の斜め前に座って観劇していました。


 私のフラメンコ初体験。
 その公演内容は、

「Shoji Kojima FLAMENCO 2005 "ROMANCE"」 主催 小島章司フラメンコ舞踊団

 演出  上田遥
 出演  瓦井マリア、小島章司、橋本拓也(ゲスト)、伊藤友季子(ゲスト)、三木雄馬(ゲスト)、スペイン人のミュージシャン、小島章司フラメンコ舞踊団
 劇場  天王洲アイル アートスフィア
 座席  A席・3階11番扉D列24番

 小島章司さんと言う人は、日本のフラメンコ界の第一人者だそうです・・・・が、私は全く知らなかった。
 ワタクシ踊りは無知で・・・いや・・・踊りに限らず・・・・・何にも知らんのですが・・・。
 何か上記の名前を見れば「知る人ぞ知る」と言う感じの人が列記されているらしいのだが、私には縁の無い人ばかりで・・・・・。

 なんといっても私にとってのビッグネームはK奥さん!
 この際だから個人情報がどーたらこーたら何ていってないで、奥さんの芸名は公表しましょう。芸名は公的なものだから隠す必要は無いでしょ。
 か・わ・ら・い・ま・り・あ。
 瓦井マリア!
 そう、マリア様ですぞ!!

 彼女以外私は誰も知らないので、勿論私の今公演の目的はマリア様。


 さて感想ですが、結論から言えば面白かった。
 踊りの公演て、結構面白いんだな。
 完成度の高い舞台だったな。
 これが、ど素人小野明良の感想です。

 観劇前は、正直言って俺はいつ寝るだろうと自分で思っていたが、最後まで起きていた。
 これは私にとって、凄い事なのですよ。
 ホントーに。



 オープニングから暫くは、スペインの本場フラメンコミュージシャンにばかり目が行った。
 そして、唯一知っている瓦井マリアさんを目で追った。
「お!瓦井さん出てきた、発見!踊ってる踊ってるカッコイーーー」
そう、私はミーハーです。

 何人かソロやデュエットで踊るも、瓦井さんが引っ込むと、私にとってはスペインミュージシャンに目が行きがちな緩慢な時間が流れていた。

 知らない人が一生懸命踊っていても私にとっては、
「フラメンコの公演てこんな感じなのか」
と言う感じでしかない。こういう時間が続くと強烈な睡魔が襲ってくるのが常なのが私。と言うより気がつくと
「ん?俺今寝ちゃったなー」
となる場合が多い。

 私は心の中で、
「おい!瓦井さん出せよ、瓦井。みんな上手いのかもしれないけど、お前さんはもういい。いーーーから瓦井だーーっ!」
と、声には出さないが下品な声援と言おうか野次を心中叫んでいた。
 そ、私は瓦井マリア様を見に来たのだ。
 マリアと言う名前だと、思わず「さん」ではなく「様」になってしまうな。


 だが一人の痩せた男の出現で、見方がちょっと変わった。
 白い衣装に身を包み舞台中央後ろに出現した男は、前の踊りが終わるのを静かに待って居た。

 舞台装置はシンプルで、半円といおうか楕円形と言おうか扇を広げたと言おうか、観客に向かって広がったような平面舞台が組まれている。その後ろに平面舞台から階段一段分降りてミュージシャンボックス。 さらにその後ろに1.5メートルほどせり上がった舞台が、人がすれ違う事が出来るくらいの幅で舞台の幅いっぱいに組まれている。 せり上がった後方舞台からミュージシャンボックス中央を割って、前方の楕円の平面舞台と昇り降り出来る幅2メートルくらいの階段。

 舞台上手袖から現れ階段の上のところに現れた細身の男は、タイミングを見計らってゆっくりと降りてくる。
 足の裏で階段を探るようにゆっくりと降りてくる。


 ボーっと見ながら私は思った。
「ん?」
「何者だこいつは!?」
「妖怪か!?」
「いや!!怪物だ!!!」

 歩いた!
 止まった!
 手を上げた!
 手をひらひらさせて下げた!
 手を左右に開いた!
 閉じた!

 次の瞬間両手を振った!
 その手を逆に振った!
 足を踏み鳴らした!

 私は怪物の一挙手一投足に目を奪われた。
 私は怪物の呼吸に引き込まれた。

「うわっ!なんじゃこりゃ!!」


 怪物の正体を小島章司氏だと悟るのに時間は要らなかった。
 これが、日本フラメンコ界の重鎮小島章司か!
 年齢的にはかなり高齢だと聞いた。
 確か70近いのではないか。いや、も少し若いか?

 跳んだり跳ねたりの若い踊りとは違う。
 武道の達人の様な無駄な動きの無い踊りと言おうか、わずかな動きで大きく物を動かすような踊りと言おうか。
 上手い言葉が見つからないが、動きは派手ではないが鋭く大きな踊りだ。
 勿論、年齢的体力的には、若い人間にかなうわけは無い。
 しかし、それをものともしない、気力エネルギー集中力パワー。
 大きなる、微動。
 なんと大きなる呼吸。

 かつて日舞の名人が、
「畳み半畳の広さがあれば、大劇場のお客さんを満足させる事が出来る」
と語ったと言うのを思い出した。

 小島氏を観て、日舞の名人の言葉は嘘ではないと実感した。


 私は、入れ込んで小島氏を観に行ったのではない。
 私は瓦井さんを、思い入れたっぷりに応援して観ていた。
 それなのに無関心な人間を引き込んでしまうその魔力。
一言。
「瓦井さんの先生って、凄い」



  前半、怪物小島氏は直ぐ引っ込んだ。
「あれ!?もう引っ込んじゃうの。ま、いいか。後半に体力温存ってことか。よし!瓦井さんだーーーッ!瓦井さーーーーーん!!」

 よーし出てきた、出てきた。
「よッ!瓦井!!」
「マリアッ!!」
私は3階席の大向こうから声を掛けた・・・・・・かったが、瓦井さんに迷惑を掛けそうなのでコラエタ。

 踊る瓦井。
 舞うマリア。
 いいね、いいね。

 休憩を挟んで後半。

 それにしても瓦井さん何度衣装を変えたのだろう。
 いろんな衣装を着られて楽しそうだが、着替えは大変そうだ。

 そして再び怪物小島氏登場。
「よッ!待ってました!」
と歌舞伎なら声がかかるだろうが、ここは静かに静かに。
 フラメンコ、フラメンコ。

 公演も終わりへと近ずく。

 クラッシックやヒップホップのダンサー等多彩なゲストを迎え、皆素晴らしい踊りを披露してくれていた公演。
 そして私の応援するお目当ての、マリアーーーーーーーーーーー!!
 その各々の技量の素晴らしさは言うまでも無い。

 イヤ技術的なことなど、何も分かっていない私の判断基準はとても胡散臭く、
「俺が良いと思ったから良い」
と言う理由以外に何の根拠も裏付けも無い。
 極めてワタクシ的ないい加減なものである。
 ま、
「人は勝手に観て、勝手に思う」
と言う典型です。



 前半の緩やかな流れから後半渦を巻くように、怪物小島氏を中心に捕らえたアンサンブルは、見事な調和を見せ一点のエンディングへと突っ走る。
 一つの逆巻く渦の様に、小島氏を中心に渦が吸い込まれていく。
 この調和は素人の私にも、個々の素晴らしさ、演出の素晴らしさ、演出家の技量の凄さを想像させる。

 完成度の高い舞台だ。
 私は勝手に決め付けた。おれがそう思ったんだからそれでイーじゃないか。

 そんな感覚に圧倒され舞台は終わった。

 終演。

 何度も繰り返されるカーテンコール。
 怪物小島氏は、演舞中とは全く別人の普通のおじさんに戻り、出演者スタッフの父親のような顔をしていた。
 ニコニコと観客に向ける笑顔は、
「どうですか、うちの子供たち良かったでしょう」
と言うようなオーラを放っていた。
 そこには、外国の踊りを踊りながらも、日本人の奥ゆかしさが存在していた。
 周りではしゃぐ今公演の子供達。
 その中の一人の子供、瓦井さんもキラキラと輝く笑顔を観客に向けていた。

 よかったよかった。
 無事終了。
 満足満足。


 観終わって、
「タップダンスってフラメンコが元なのかな?」
なんて事をぼやっと思いながら心地よい気分に包まれている。

「フラメンコダンサーってフラメンカーとは言わないのかな」
「この公演は黒字だっただろうか。3回の公演じゃ少なく無いか?」
「スペインからミュージシャン呼ぶの高いだろうな、彼ら良かったからギャラ高いだろうし、スペインからの航空運賃は高いだろうし、滞在費は高いだろうし・・・、でもスペイン大使館後援って書いてあったな・・・金、沢山出てんのかな・・・」
「ゲスト沢山呼んでるし、劇場も高そうだし・・・・・客席は全部で何席あったのかな・・・・・・あ、俺の心配する事じゃないんだ・・・でも、・・・経済的な支えが無いと良い物も続かないし・・・・・」
「瓦井さんのパワーは凄いな、、、うちでもガシッと食べるよな、、、、やっぱり喰わなきゃ持たないよな、、、、踊りは体力だ!・・・いや気力も・・・・」
「天王洲あたりって、マイカル本牧みたいにゴーストタウン化して無いか?」
等と、取り留めの無いことが頭をよぎる。


 そして私は、帰途についた。

 いつの日か瓦井さんが、「怪物」になり生徒のご主人と、
「めおとフラメンコ公演」
を踊る日を期待しながら、私は劇場を後にした。


 あ、でもご主人は別に仕事持ってるんだっけか。



 でも兎に角皆さん!
 フラメンコはいいですぞ!!
           


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