沼部S、店内。 「仲裁は時の氏神」 この言葉が正しいなら、私は昨日神様だった。 厳密に言うと止めたり仲裁した訳じゃないんだが、結果止まった。 俺は立ち上がった。 「お前らウルせーぞ。やるなら、外でやれ」 蹴りを放ち優位に立っていた方は、 ”ウルセェな!文句あんのか!!” と云う顔をしたが、私との勝負は0.1秒で終わった。 形勢不利だった方は、 ”助かったーーー” と、文字通り神を見る目つきで私を見た。 間を行き来して困っていた二人は、 ”止めて頂いて、誠ぉ〜に有り難う御座いました。深ぁ〜〜く御礼申し上げます” なんて顔は、していなかった。目を見開き、口をボーーーーーーっと空けて俺を見ていた。 ようやく法的に問題なくお酒が飲めるようになったばかり、という風の4人組。 「イヤ、こいつ初対面でイッコ下のくせしやがって、俺にため口ききやがったんすよぉ」 はあぁ〜〜ん? ガードして無いところからパンチが飛んで来たような気分。 (そ・・それを、俺に訴えてどーーーーーーーするよ) (俺は、お前らの兄ぃじゃねぇよ。増してや親でも先生でも・・・・) (ま、かつては俺がそんな気分になったこともあるよ・・・だけどね・・・・・お若ぇの・・・) 「そんなことは、俺は知らねぇよ。やるなら外でやれ!」 ”ぁ・・・あ〜〜〜訴えが・・・・却下されちゃった” 「(精一杯のニコッ)ま、平和に行きましょ、平和に。ね、穏便に・・・・・楽しくやりましょうよ・・・」 1時間後、奴等は仲良く喋っていた。若さの良い処。 ただ一人、形勢不利だった奴は、最後まで”塗り壁”のような表情が崩れる事は無かった。 そして奴等は、 「すみませんでした」 の言葉を残し、仲良く帰っていった。 連れに聞いた、 「あんな感じで良かったかな」 「うん、いいんじゃねぇか」 「あれで良かったんじゃないですか」 知らん振りや、見てみぬ振りをする風潮の昨今、俺の行動は時代遅れかもしれない。 しかし、 「仲裁は時の氏神」 昨日私は、神になった・・・・・・・・ナンチテ。 |