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「フランス」(2004.10)

 私はかつて20代の中頃、機会があってフランスはパリ16区というところに2ヶ月ほど滞在したことがある。
 あとにも先にも、フランスはそれっきりである。
 今となっては、もう20年近く前の事だ。
 向こうの人々がバカンスといって長期休暇を取るような時期だった。
 観光旅行に行ったわけではない。
 勉強をしに行ったわけでもない。
 増してや働きに行ったわけでもない。
 ただボーっと過ごしていた。
 あるパリ在住の日本人の画家に、遊びにおいでよと言われて行ってみただけだ。
 東京にいる生活をそのままパリに移したような生活だった。
 トレーニングをして、映画を見て、街を散策して、南仏まで行ってみて、野宿をして、国境を越えてスペインに行って・・・。
 そんな気ままな時間を過ごしただけだ。

 フランスについての予備知識はほぼゼロ。
 私は、大学の第2外国語でフランス語の単位をちゃんと取っている。
 しかし勿論フランス語なんて全く分からない。
「ジュ・ヌ・コンプラン・パ・ル・フランセ」(私は、フランス語が分からない)
という言葉を引っさげて、あちこちふらふらと出歩いた。
 カフェでコーヒーを飲み、ビールを飲んだ。
 何かというとワインを飲んだ。
 言葉が分からなくても、何とかなるものだ。
 向こうは英語が少し通じる。私も英語ならほんの少し分かる。

 そんな中で感じたこと

*パリの光はどんよりとしている。
 曇り空の印象が強い。私の行った時期だけだろうか。
 しかし建物の色なども、その曇り空の中で一番栄えて見える配色だと感じた。
 そして人は、夏の短い間の強い日差しをむさぼる様に浴びようとしていた。

*フランスパンとチーズと赤ワイン
 この3つがあれば何もいらない。
 これはフランスの定番だと後で知ったが、自然にこの3点セットに辿り着いた。
 チーズの種類の多さも凄かった。もともとチーズ好きだった私だが、この渡仏を機会に私はさらにチーズが大好きになった。
 フランス語だとチーズは、フロマージュ。

*ワイン
 フランスのスーパーで一本、当時のレートで確か100円〜200円程度の安い赤ワインをよく箱で買った。
 ん!?このワイン美味いなと思いラベルを見るとボルドー産の場合が多かった。
 だから今でも私はボルドー産のワインは美味いと思い込んでいる。

 日本で買う安いボルドーワインは、ボルドーと言うよりボルドー風と感じる。
 あの緑色のカキ氷なんかに使うシロップを、メロンソーダといっているのに近いような。

 帰りに免税店で買った一本100フランの赤ワインは美味かった。
 もっと高いのは、きっともっと美味いのだろう。
 
*ソースが美味い
「マキシム」という有名なレストランに一度行った。
 牛肉のステーキetc.を食べたが、肉は日本のほうが美味かった。日本人だからそう感じるのだろうか。
 しかしソースは、サラダのドレッシングから何から全て非常にうまかった。
 マキシムに限らず、街の一般のレストランでもやはりソースがうまいなと感じた。
 フランス料理の命はソースに在り、と見た。実際これもフランスの定番だとあとで知った。

 フランス人が皿に残ったソースをパンにつけて食べるのはいい考えだと思った。
 私は、すぐ真似をするようになった。
 ただし高級店ではやってはいけない。

*コーヒーが美味い
 フランス人いわく、
「フランスの水は、石灰質が多く含まれているのでコーヒーに合う」
他にも、
「日本の水は、コーヒーよりお茶に合います」
「日本酒美味しいです。日本は魚を食べる国だから、魚に合う日本酒が発達しました」
と奴等は語る。

*差別はある
 何をどう差別しているのかそのフランス的基準は分からないが、差別がある。
 日本人もしくは東洋人ということで、露骨に侮蔑的表情を浮かべる奴がいる。上等じゃねえか、勝負するか!?

*個人主義
 良くも悪くも人に干渉しない。
 フランス好きになる日本人の多くは、この無干渉がいいらしい。
 ただ、母国日本の事を悪く言うフランス好きの一部日本人がいるのは、気に喰わない。
 フランス贔屓なのはかまわないが、自国をさげすんだり自虐的なことを言う奴は、ただのフランスかぶれの馬鹿である。

*ちょろまかす
 買い物のつり銭など、外人だと見るやちょろまかそうとする。私は何度かちょろまかされそうになった。
 向こうの感性だとちょろまかされるほうが悪いらしい。
 結構立派なお店でも同じだと聞いたが、、、。

*芸術
「私、絵は良くわかりません」
「音楽の事は良くわからないから」
 日本人がへりくだってよく使うこういう言葉。
 フランスでこれをこのまま使う事は、
「私馬鹿です」
と言っているに等しい。らしい。
 フランスでは芸術に造詣が無い事は、レベルが低いと判断される。

 私の見たフランス人は、たとえ他人が何と言おうとも、
「私はこう思う」
 と、たとえそれが日本的に言うところの背伸びした言い方でも、自身を持って語る。
 この姿勢は、日本人が学ぶべきところだと私は思う。

 確かに外国のストレートな表現は、好感が持てる。
 日本人の本音と建前は、煩わしく感じる事が多い。
 ただ歴史ある国がたどり着いた婉曲的な言い方というのも、否定されるばかりではないとも思う。

 ところで、フランスのテレビでは、裸の女性がたびたび出てきた。
 日本的なぼかしとか隠す事は、全く無い。文字通り全裸。
 これも芸術に対する造詣の深さの表れだろうか。
 いやぁー、良い国ですぞフランスは!



 まだまだ感じた事、覚えている事は沢山あるが、ふと思い出した事を書いた。
 何故20年前のことを今書いたのか理由はない。

 そういえばレストランで、客が何度もワインを交換させているシーンを見た。
 知り合いの料理人に話したら、
「それは貴重なシーンを見たな」
と、驚いていた。
 ワインチェンジは、中々出来るもんじゃないないらしい。
 その料理人は、
「気に喰わないワインの交換なんて、日本人が誤解している伝説だ。そんなこと出来る奴はフランスにもそうそういるわけじゃない」
と言っていた。
 頼んだワインが口に合わないからと言って換える物ではなく、味がおかしい時交換を要求するべき物だからだそうだ。
 レストランで味が極度に劣化したワインなんか置いている所はまず無い。
 そんなところで微妙な味覚に自身を持って、交換を要求できる奴など滅多にいないとの事。

 なーるほど。
 貴重なシーンだったんだ。
 そのうち詳しく書くかな。

 以上20年ほど前のフランスの印象と、現在のフランスが一致するかどうかは、私は知らない。
       


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